僕は車に乗って、すぐさま帰路を走る。
 十時を過ぎたところで、この時間だとどの店も閉まっている。しかたなくコンビニで一番高いケーキを買った。値は張ったが、いまはすべてがどうでもよかった。リナに会いたい、リナに会いたい、リナに会いたい。その一心で車を走らせていた。
―――――――着いた。
木でできた手作りの表札には『優』『リナ』と書いてある。リナ直筆でハートマークまでついている。いつも家を出る時と帰ってくる時に、まずはこれで癒されるんだ。
安アパートだからって関係ない。そこにリナがいるだけで僕は幸せなんだ。
「ただいまです!!」
「ゆう……おかえり」
 入ってすぐに返事があった。
僕を見上げるリナ。身長差で、僕は屈む形になる。
目の前にリナがいる。赤いチェックのスカートと白いセーター。可愛い。
どうしようもなく胸が痛かった。
会いたかった会いたかった会いたかった。
「……リナ愛しています」
「ば、バカモノ! ……いきなりそんな」
「ごめんなさい。でも、ずっと言いたかったんです」
「……うん」
「あ! ちょっと待って、ずっとここで待ってたなんてことはないですよね!?」
「待ってた。帰ってくるの遅いから……心配だった」
 心配させてしまうなんて……! リナのほうが心配だ。
「ごめんなさいリナ! 足、疲れてないですか? あとで揉んであげますからね」
「そ、そんなのいい。それより……ね」
 モジモジと顔を赤らめて身体を揺らす。それだけで気絶してしまいそうなほど可愛かった。
「可愛いなぁリナ……ああ、可愛いなぁ」
「う、うるさい! でね、わたし……ケーキ作ったの。あと、フライドチキンは作るの無理そうだったから……から揚げも作ったんだけど……ごめんね?」
 手作り……料理……僕に?
「な、なにを謝る必要があるんですか! 僕はフライドチキンなんかよりもから揚げのほうが大好きなんです!」
 食べたい。イブにリナの手作り料理を食べる。こんな幸せあっていいのだろうか。
「ほ、本当? そっか……よかった。じゃあ用意しておくから着替えてきて♪」
 リナもあからさまに機嫌がよくなり、それを見た僕もこのうえなく幸せだった。
「はい、じゃ、これお願いしますね」
 荷物を渡す。すぐに着替えてご飯が食べたい。手作り……ふふふー。
「……なによ、このにおい」
「え、なにか言いました?」
「とぼけないでよ! 女の臭いがするって言ってるのっ!」
 見開いた目。怒鳴られた。血の気が引いていく。
――城下さんの匂いがついたのか?
「そ、それは……そんなことはないです」
「ふざけないで! ……それに何よこれ、ケーキ? わたしが作ったのなんかいらないって、そう言いたいんでしょ!?」
 帰りに買ったケーキ。
「そんなことないです! リナのケーキが食べたいです!」
「嘘ばっかりついて! もういい!」
 リナは居間に向かった。
 僕の頭の中はグチャグチャで、泣きそうなくらい不安だけど、とにかくリナを追った。
「そんなにわたしが嫌いならそう言えばいいじゃない! 遅れたのも、どうせ他の女に会ってたからでしょう!」
「リナ!!」
こたつの上に飾られいびつなケーキ。少し焦げたから揚げ。その他ちょっとした物。
それらすべてを、リナは……。
「こんな砂糖の塊……もういらない!!」
 横凪ぎ、払った。
ケーキは崩れ落ち、から揚げは転がっていく。リナとの幸せなイブが、音をたてて崩れていく。
「…………ああ」
 漠然とした後悔。
 僕が城下さんの願いを聞いたりするから、こんなことになったのか。
僕がどのようにしていれば、リナを怒らせずに、城下さんも傷つけずにすんだのか。
分からなかった。ここに広がる光景が、どうしても理解できなかった。
だから僕は、ただ涙を溜めてリナを見た。
「……リナ……ごめんなさい……」
 ポロポロと大粒の涙が床に落ちた。謝ることしかできない。
城下さんを抱きしめたのも、ケーキを買ってきたのも自分の責任だ。
「リナの……一生懸命作った……ケーキ……」
 崩れたお城のようになったケーキを見ると、心が痛い。胸を無数の槍で突かれているよう。
 例え落ちてしまった物でも、こんなごちそう他にはない。
 ゆっくりと手ですくい、大きく頬張った。
「……はぐ…………んぐ……」
 噛み締める。
「……んっ……うん……うん……」
 噛み締めて、噛み締めて、愛情を確かめる。
「ちょっと……やめてよ」
「やっぱり……リナは料理も上手です。すっごく美味しくって……一日がんばって本当によかったって思えます」
「汚いからやめてってば!」
「……リナがやめてというなら、僕はやめるしかありません。ですが、僕はすべて食べたいんです」
 リナがやめてというなら、従う。僕はすべてに従う。一回だってリナの言うことに背いたことはなかった。
「また作ってあげるから! から揚げも!」
「そうだ……から揚げ……」
 這ってテレビの下に手を差し入れる。手が丸い物体に触れ、それを引き出すと薄焦げたから揚げだった。埃を息で飛ばして頬張る。
「……んぐんぐ……最高ですよリナ」
 涙があふれてくる。こんなに美味しいものを、僕のために作って待っていてくれた。その事実が幸せで幸せで仕方ない。
 でも、僕を待っていてくれたのに……僕は……。
「……なんでよ」
「なんでそうやって、わたしがなにしても怒らないのよ!?」
 決まっていることだ。
「……リナが好きだから……嫌われたくないからです」
「じゃあ! なんで……なんで女の臭いがするのよ!?」
「これは……城下さんという上司の匂いです」
「ッ! やっぱり、そういうことだったのね!!」
「違います! 聞いてくださいリナ!」
「いまさら何を聞けって? その女とイチャイチャしてたんでしょ!? わたしに飽きたんでしょ!!」
 とっさに、リナを抱きしめていた。絶対にないことを言うからだ。もしくは、もう抱きしめずにはいられなかった。
「リナに飽きるなんて……そんなこと絶対にありません。考えたこともありません」
「…………」
「城下さんは、リナと同じ髪型をしています。リナを真似たそうです。そうすれば、僕に振り向いてもらえると、そう思ったそうです」
「…………」
「キッパリ言いました。けど、それで終わりじゃあんまりじゃないですか。今日はクリスマスイブ。城下さんに一つだけ願い聞いたんです。そしたら抱きしめてくれって……だから最初で最後、一回だけ抱きしめてあげました……」
「…………だから……僕が言いたいのは……本当にごめんなさいとしか言えません」
 正直に言ってしまった。黙って聞いていたリナはどう思ったのだろう。もしかしたら……いま抱きしめているのが、最後になるなんて……そんなことも覚悟しなくてはならない。
「やっぱり、リナに嘘はつきたくなかったから、本当のこと言っちゃいました」
 それが本心だった。
「ふぅ……ゆうは甘いのね」
 ジッと、僕を見つめてしゃべりはじめた。
「わたしね……夜が怖いの」
「……え?」
「夜に、ゆうがちゃんと帰ってくるか……。ゆうがわたしを以外の女の人に会ってないか……不安で……」
「わたし、料理下手だし、家事もうまくできないし、そのうえ可愛くもないし……。ゆうはカッコイイしがんばり屋さんで優しいから……。だから、わたしなんかよりもっと美人の人のところに行っちゃうんじゃないかって……」
 そして、目を伏せた。
「……可愛くないなんて言わないでください」
 嬉しいと思うよりも先に、怒りが頭を支配した。これが初めてかもしれない。リナに対して怒りを抱いたのは。
「お願いだから、僕が一番好きで一番可愛いと思っている子のことを、可愛くないなんて言わないでください!!」
 例えそれがリナでも、リナを可愛くないということだけは許せなかった。絶対に絶対に、リナは可愛いんだ。可愛くないなんて言わせはしない!
「リナがいてくれるから毎日がんばれるんです。リナを見ているだけで、僕はなんだってできるんです!」
「こんな安月給の男でも愛してくれるリナがいるから……がんばれるんです。……好きなんです、愛しているんです、胸が痛いんです、リナ……」
 リナの身体をギュッと抱きしめた。小さい身体。まるで中学生のように細い肉体。壊れるくらいに強く抱きしめた。
「……ゆう……わたしを……ずっとわたしを捨てないでいてくれる?」
 リナも強く抱きしめ返してくれる。
「あたりまえです。離れたくないんです……僕のすべてなんです」
「ゆう…………うん、ありがとう」
 二人分の涙が、床に吸い込まれていった。



 それから、いつもの仲を取り戻した僕たちは、暑苦しいくらいに寄り添ってこたつに座っていた。
 から揚げはなくなってしまったが、買ってきたケーキを食べていた。
「おいしいですか、リナ」
「甘いものは……好きなほうだし」
「本当ですか!? よかったです。お菓子屋さん閉まっていて、コンビニのやつなんですけど……すいません」
「もう、そんなことないって。じゅうぶんおいしい。だってわたしのために……でしょ?」
 上目遣いに訊ねてくる。
「うふ……ねぇ、あーんして」
 目の前に一口サイズのモンブランが……。
「いいんですか、そんな神様にも怒られるような行為!」
「なに言ってるの? 早くしてよ」
「は、は〜い。はむ……」
「おいしい?」
「おいしいです〜」
「そ、そう……うふ。……じゃあ、これも食べて」
 リナは口に含んだモンブランを……って、口移しってやつでしょうか!?
「あわわっわっわ!? リナ!? 本当にいいんですか、そんな大胆な」
「んー」
「あわわわ……それでは、し、失礼しちゃいますですよ」
 心臓の音がうるさくも、確実にリナの唇に近づいている。
リナの唇に到達した。口を重ねると、こじ開けるように唾液の絡みついたモンブランを押し込まれる。ねっとりとした食感を、軽く味わって飲み込んだ。
「んちゅ……んはぁ……」
 だが、リナの舌はそのまま僕の口で蠢いていた。勢いのまま、僕も舌を絡ませ、唾液の行き来を繰り返す。
「んはぁ……んちゅれちゅ……リナ……んはぁ」
 行為の最中に目が合うと、いじわるそうに舌で歯の隙間をくすぐってくる。二日ぶりのキスは、情熱的で甘いお菓子の味だった。
「んちゅ……じゅるぅうう!」
 リナは唾液を吸いあげ、そのままゴクリと飲み干した。僕の唾液を飲んでくれるというだけで、すでにズボンに隆起するモノがあった。
「あれ……なーにこれ? うふ、してほしいのかな〜?」
「い、いじわるです」
 どうにも恥ずかしく、顔が熱くなるのを感じる。
 勢いに乗ったのか、リナはズボン越しにモノを擦る。
「んっんっ……んふふ、なに硬くしてるのよ、変態」
「あっ、リナ……ダメです……いたっ」
 ペチンと指で弾かれ、微かに痛い。デコピンならぬチンピンといったところ。
「えいえい」
 ペチンペチン。
「いた、いたいですリナ……ぅぅ、そこは敏感なんですから……」
「うふ」
 いたずらに笑ったあと、飛び掛るように抱きついてきた。僕のモノに顔を近づけると、そのまま臭いを嗅いでいく。
「……くんくん……くんくん」
「あの、その……り、リナぁ」
 死ぬほど恥ずかしい。すでに硬くなっているソレは、いったいどんな臭いがしているのか……なんて、良い匂いのはずがない。
「ゆうの匂い……うふ、昨日ちゃんと洗ったのぉ〜?」
 息が吹きかけられ、さらに大きく立ち上がってしまう。正直すぎる息子にも、恥ずかしさ倍増だ。
「あぅ、昨日は忙しかったから……それにリナも寝ちゃってたし……すぐ寝ちゃいました」
「あらら、どうりで良い匂いがすると思った」
 ドンと肩を押され、仰向けに倒れる。
「いいよ、してあげるわ……昨日しなかったし……いっぱい出るんでしょ」
 リナは足で起用にチャックを下ろし、そのままペニスを引っ張り出した。
 大胆にも目の前でパンツを下ろし、どうどうと秘所を見せ付けてくる。
「もう、準備できてるから……いくよ……」
 まるで便器に座るように、僕の胸に手を置いて伸長に腰を落としていく。
 ペニスの先端が、小さな秘所を割り開いていく音。
夢見心地の僕は流れに頭がついていかずとも、その音だけはちゃんと聞こえた。
 ――ちゅく。
「あ、ああああ! んぅ……ふぅ……」
 そこで一回止まって、息を整える。リナと何度したかわからないけど、いつまでたってもリナの秘所は初々しく押し開く感覚が伴うのだ。
「それじゃ……全部入れるから……ちゃんと見てね」
 リナはスカートを捲り、無毛の秘所を惜しげもなく見せてくれる。悶絶してしまいそうな光景に、あえなく極めつけがやってくる。
 ――ちゅく、じゅぶ。
「んぁぁぁぁぁ! あぁ……はぁ……全部、だよ? 見て、全部入ったんでしょ?」
 蕩けた瞳で見下ろしてくる。
 僕の目には、完璧に結合した秘所と秘所が映っていた。
「はい……見えてます。僕のちんちんと、リナのかわいいま○こが隙間なくくっついているのが……見えてます」
「うふ。よかった……喜んでくれているのね……」
「あ、ぅあ……」
 リナは太腿と胸に手を置いて、斜め上下に腰を動かしてきた。
 僕に動くなといっているような目。任せてくれれば気持ちよく射精させてあげるから、と言わんばかりの目だった。
 実際、二日溜めていただけでもリナの膣内ならすぐに果ててしまいそうだ。
「はっ、はっ、はっ……どうなのよ? 気持ちいいのか悪いのか、はっきり言ってよ」
「んっく……はぁ……大好きなリナとエッチなことしてるんです……くはっ……気持ちいいに決まってるじゃないですか……」
 蠢く膣肉に揉まれて、とんでもないほどの締め付けがいつも通りに僕を襲っている。
 斜め上下に動くことで、圧迫感と摩擦度合いが凄まじい。まるで掃除機に吸い込まれているように、ペニスが引っ張られている錯覚すら伴った。
「うふ。よく言えました。それならご褒美を上げなきゃね……」
 リナが意味ありげに指に唾液を垂らした。ねっとりと塗れた指先を結合部の下に差し入れていく。
「ぐっ!!」
 それはまずい!
揺れた指先で僕の窪みを焦らすように撫でまわす。ペニスに突き抜ける快感と、アナルを弄くられる快感。すべてがごっちゃになり、鉄槌でぶっ叩かれたような衝撃が駆け巡った。
「うっ、んっくぁあ! そんなの、そんなの良すぎます!」
「ん、ん、んふ……よだれ垂らしちゃって……いいよ……もっともっとわたしで気持ちよくなっていいよ」
 パチャパチャと音が鳴るほど激しく腰を動かす。小柄な肉体だからこそできる、小刻みな芸当。子宮に届くような動かし方ではないが、入り口を行ったりきたりしていることで、亀頭周辺にとんでもない刺激が加わる。
「は、はじけちゃいます……リナ……リナ……」
「あっ、んふぅ……いつもみたいに外で出さなくていいから……んっく、遠慮しないで……今日はわたしのなかで……熱いのいっぱい出していいんだよ……」
 膣内で出していい。それを聞いた僕は、無我夢中でリナを求めていた。
 気づけばリナの腰を持ち、思うがままに突き上げを繰り返していた。リナも必死で動くため、バランスの取れない結合部から交じり合った液体が出てきていた。
「んっく、はぁぁぁ……ん、ん、んぁ……」
「ふぁ……や、や、あ、あぅ、はぁぁ、んぁ、い、イく、なんかきちゃうぅ……」
「くっ……リナ、そろそろ、で、出ます」
「わ、わたしも、きゃん! ん、あぅ、イ、いけるから、いっしょに、あぅっ……」
「あ、で、出る…………!!」
 急速に駆け上がってくる快感の波に逆らえるはずもなく、せりあがってきたものをそのまま吐き出した。
「ひああぁああっっ! んんんんんぅぅぅ!!」
 最後に深く突き入れて、子宮に向かってびゅくびゅくと汚濁を発射させた。
「あぁぁあぁ……熱いの……こんなに熱いの久しぶり……」
 二、三度の律動で収まるはずもなく、リナの小さな秘所から大量の汚濁が溢れてくるまで射精は続いた。
「はぁはぁはぁ……あはぁ……リナ、ありがとうございました」
 まず、礼を言ってしまった。気持ちよかったからというのもあるが、騎乗位ということで、リナにしてもらったということが嬉しかった。
「んはぁ……ゆ、ゆうがよかったならそれでいいの!」
 エッチが終わると、すぐにいつもの調子にもどってしまう。
 とは言っても、まだ僕たちは結合したままだった。
「んはぁ…………もうちょっとこのままでいたい」
 わがままかな、とも思った。けれどリナは案外嬉しかったらしく、入ったまま身体を預けてきた。
「んちゅ……いいよ」
 軽いキスと、笑顔だった。


 エッチが終わると、風邪を引く前にお風呂に入った。
 お互い洗いっこしながら、狭くとも温かい湯船に二人で浸かった。
 お風呂が終わると、リナをベッドに呼んだ。
「ぅぅぅ……パジャマのリナも可愛いです」
 パジャマ姿は一撃KOモノの攻撃力。なんかこう、無闇に抱っこしたくなる。
「抱っこなんてしたら殴るからね」
「な、なんでわかったんですか?」
「はぁ……ゆうの考えてることなんて簡単すぎる」
「……そうですか」
 でも、いま僕が考えているのはちょっと別のことだったりする。
「……リナ、突然ですけど、これクリスマスプレゼントです」
 ベッドの下から取り出したマフラーを、リナに見せる。水色と青のストライプ柄だけど、リナに合えばいいのだが。
「え、わたしに……?」
 リナの目が座る。そのまま数秒間動かなかった。
「り、リナ? その、……マフラーなんて安くて……ごめんなさい」
「…………そ、そんなことない! そ、その……ありがと」
「……は、はい! よかったです、喜んでもらえて」
 マフラーの巻き方を知らないのか、グルグルと首に巻きつけるリナ。子供のような無邪気な笑顔を見ていると、僕はいったいどれだけ幸せなのかわからなくなる。
 きっと幸せにランクを付けられるのなら、間違いなくSだ。
「うふ、温かい……ふわふわしてる」
 珍しく純粋な笑顔も見れたことで、今年のクリスマスもよかった。
「あっ、ゆう。わたしからもクリスマスプレゼントある」
「え?」
 意外だった。リナはお金はもっていなはずだし、何か買ってくれたとは思いがたい。
 もしかして、キスでもくれるのかと思いきや、タンスに手を突っ込んで戻ってくるあたりを見ると違うようだ。
「な、なんでしょうか。すごく楽しみです」
 ハラハラドキドキ。なんだろうか、見当もつかない。
「……はい、これ」
 渡された小さな紙切れ三枚。そこには丸い文字でこう書いてあった。
「肩たたき剣」
 ――漢字が間違ってる。けど、すごくすごく嬉しかった。
「い、いつでもってわけじゃない。わたしが疲れてなくて、暇で、それでいて気が向いたら」
 愛情の篭った手作りチケット。まさに夢のチケットだ。
 こんな……こんなに幸せな生活……幸せだ。
「……んぅ……ぇぅ……んぐ……ぐす……」
「な、泣くなバカモノ!」
 リナがいれば、なんだってできる。
 明日も明後日も、いつだってがんばっていこう。

(終わり)
 
 

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